古き良きを残す、調和とバランスの家
2020年に、愛知県から川根本町へ移住された70代のK様。
川根本町の歴史が感じられる立地。趣のある古民家と広い庭。 庭と言っても、当時は雑草が生い茂り、ほとんど手入れされていない状態でした。 それでも、この地と建物に惹かれ、K様はこの古民家を購入されました。
K様の家づくりのテーマは、調和とバランス。 効率や便利さだけを基準にするのではなく、 K様ご自身の色彩感覚や豊かな感性を活かしながら、 大きく間取りを変えるのではなく、しつらえを整える家づくりでした。
季節や自然の気配を感じながら、 ご自身が心地よいと思える空間で過ごすこと。 古民家が持つ味わいを活かしながら、 色や素材、建具や家具のひとつひとつに、 K様らしさをちりばめること。
住まいを新しく整えるだけではなく、 暮らしの美しさを育てていく。 そんな豊かさのあるリノベーションとなりました。
リノベーション前
もとはこんなお家でした
もともとの住まいには、時を重ねた古民家ならではの趣がありました。
以前の住まい手によって手が加えられ、きちんと管理されていたものの、
古民家として見せたい部分が増築や改修によって隠れてしまっているとも感じました。
そのため、今回のリノベーションは、せっかくの古民家、
できるだけ改修前に近い状態に戻したいという想いで行ないました。
リノベーション後
こんなふうに生まれ変わりました
リノベーション後の住まいは、
古民家らしい落ち着きはそのままに、
K様の色彩感覚を取り入れた空間になりました。
梁や建具、
味わいのある家具もできるだけ活かしました。
新しい部分と、昔から残る部分が馴染むよう
木そのものが持つ色味なども考慮し、
塗料の色や濃淡にも気を配りました。
大きな窓のある、明るいダイニングキッチン。
差し色のグリーンは、K様のお気に入りです。
キッチンの床は、市松模様にしました。
既製品ではなく無垢材を加工し、一枚一枚丁寧に貼り合わせることで、
フローリングとは異なる質感や味が生まれました。
一部、既存の床を残したのは、
あえて見せることで古材の魅力を表に出すという
K様の想いがうかがえます。
通しの間を壁で仕切って、客間と寝室の二部屋に分けました。
当初、欄間はふさぐ予定でしたが、
せっかくの欄間、なんとか活かせる方法を一緒に考えました。
そこで、寝室側にも障子をはめ込み、どちらの部屋からも
違った表情を楽しめるようにしました。
完成後、夜に寝室の明かりをつけると、
障子越しのやわらかな色が客間にほんのりと差し込みます。
当初、古民家部分と増築部分の外観は色が異なっていましたが、
同じ色に塗装し直したことで、全体がひとつにまとまりました。
くぐり戸も昔ながらの青色を使ったことで、
遠くからも目を引くお家となりました。
施工風景
職人の手仕事で、古民家を再生する
リノベーションは、新たにつくる工事とは違い、
今ある材料の状態を見極めて、直し、価値を加えていきます。
既存の良さを活かすということは、
職人が手作業で調整していくということ。
今回も、大工、建具、塗装、各職人が腕を振るい、空間をつくりました。
古民家の雰囲気に合わせるため、
できるだけ既製品を使わず、手づくりで仕上げています。
手仕事だからこそ感じられる温かさがあります。
きれいに直す、取り替えるのではなく、
もともとの佇まいになじむように手を入れる。
そこに、リノベーションならではの細やかな作業と、職人の経験が活きています。
家づくりのエピソード
対話を重ねて、一緒に育んだお家
今回の家づくりでは、K様と何度も打ち合わせを重ねました。
どこを残し、どこを直すのか。
見た目だけをきれいにするのではなく、
この家がこれから先も大切に住み継がれていくためにどうしたらよいかを、
一緒に考えながら進めていきました。
古くても、きちんと手入れされているものには価値があること。
玄関の天井や居間の梁、ガラスの明り取りは
この家の魅力を物語る大切な存在。
そして、住みながら手を加えていくことで、
その家はさらに価値が加わるということ。
K様の考え方やセンスに触れるたび、
私たちも多くのことを学ばせていただきました。
打合せの中でK様が話してくださった、
「今回は増改築した部分を含め、この古民家を昔の状態に近づけるためのリノベーション。
そうすることで一体感が生まれ、10年20年経った時、この家を気に入ってくれる人が現れたら嬉しい。
そして、自分と同じような想いを持った人が再びリノベーションをしてくれたらもっといい家になる。
だから、今あえて2階は直さない。」
そんな想いに私たちは深く感動しました。
完成後、K様から
「はじめは、みさとさんからいろいろ質問されて、
どうしてこんなことまで聞かれるのだろうと思った。
でも、出来上がったものを見たら、そのヒアリングの意味がわかった」
と話されました。
たくさん問いかけをし、想いを聞かせていただき、最初から最後までお施主様と一緒に育んだ時間は、みさとにとっても大変楽しい時間でした。
また、K様には塗装も手掛けていただきました。この家への想いを強くお持ちのK様。
ただ完成を待つのではなく、ご自身の手でも家づくりに関わっていただきたいという想いから
お声がけしました。一緒に作業を進めたことも楽しい思い出となりました。